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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)610号 判決

原告

平井敏彦

尾曲良輝

吉田正宏

市川広

天川宏毅

右訴訟代理人弁護士

平栗勲

岩嶋修治

山口健一

被告

北陽電機株式会社

右代表者代表取締役

尾崎一義

右訴訟代理人弁護士

吉村洋

松本司

浦田和栄

右訴訟復代理人弁護士

村上和史

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告平井に対し金三三五万七六八二円及び内金八四万六六九二円に対する昭和六〇年六月二六日から、内金八三万二一四九円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を、同尾曲に対し金二四九万九四三八円及び内金五八万七一二四円に対する同六〇年六月二六日から、内金六六万二五九五円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を、同吉田に対し金一四三万六七三八円及び内金五〇万〇五六二円に対する同六〇年六月二六日から、内金二一万七八〇七円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を、同市川に対し金二五六万九五九四円及び内金五三万二八四三円に対する同六〇年六月二六日から、内金七五万一九四五円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を、同天川に対し金一四〇万三二四八円及び内金三〇万〇三五二円に対する同六〇年六月二六日から、内金四〇万一二七二円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告吉田を除く原告らはいずれも、昭和五八年一月から現在に至るまで被告の従業員である。原告吉田は同月から同六〇年一二月一九日まで被告の従業員であったが、翌日退社した。

2  原告平井の同五八年一月から同五九年一〇月までの基準内賃金、残業時間、年間所定労働時間は、それぞれ別表(略)(1)基準内賃金欄、残業時間分欄、年間所定労働時間欄記載のとおりである。基準内賃金に一二を乗じ、年間所定労働時間で除したものが時給であり、右期間内の時給は同表時給欄記載のとおりである。労働基準法三七条により右時給に一・二五を乗じ、さらに残業時間を乗じて計算されたものが同表金額欄記載の金額になり、これが当該月に原告平井が支給を受けるべき時間外賃金である。そして右期間の右金額を合計すると同表合計・金額欄記載のとおり八四万六六九二円になる。なお、残業時間は、タイムカードの退出欄または残業欄に打刻、記入された数値から算出される分単位のものを月毎に合計し(その数値は同表残業時間分欄記載のとおりである)、三〇分以上は切り上げ、三〇分未満は切り捨てて時間単位に換算した(その数値は同表残業時間欄記載のとおりである)ものである。

原告尾曲、同吉田、同市川、同天川の右期間の基準内賃金、残業時間、年間所定労働時間は、それぞれ別表(2)ないし(5)基準内賃金欄、残業時間分欄、年間所定労働時間欄記載のとおりである。そして前記の方法により計算すると、原告尾曲らが右期間に支給を受けるべき時間外賃金の合計は、それぞれ五八万七一二四円、五〇万〇五六二円、五三万二八四三円、三〇万〇三五二円である。

3  原告平井、同尾曲、同吉田、同市川、同天川の同五九年一一月から同六二年八月までにおける、前記の方法で算出される時給、残業時間、及び支給を受けるべき時間外賃金は別表(6)時給欄、時間欄、金額欄記載のとおりであり、原告平井らが右期間に支給を受けるべき時間外賃金の合計は、同表合計・金額欄記載のとおり、それぞれ八三万二一四九円、六六万二五九五円、二一万七八〇七円、七五万一九四五円、四〇万一二七二円である。

4  しかるに被告は、原告らの時間外賃金を全く支払わない。

5  よって、被告に対して、原告平井は、未払い時間外賃金の合計一七七万八八四一円、同額の労働基準法一一四条所定の付加金、及び内金八四万六六九二円に対する同賃金の支払い期限後である昭和六〇年六月二六日から、内金八三万二一四九円に対する同賃金の支払い期限後である同六三年三月二七日から各支払い済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の、原告尾曲は、未払い時間外賃金の合計一二四万九七一九円、同額の労働基準法一一四条所定の付加金、及び内金五八万七一二四円に対する同六〇年六月二六日から、内金六六万二五九五円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金の、同吉田は、未払い時間外賃金の合計七一万八三六九円、同額の労働基準法一一四条所定の付加金、及び内金五〇万〇五六二円に対する同六〇年六月二六日から、内金二一万七八〇七円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金の、同市川は、未払い時間外賃金の合計一二八万四七八八円、同額の労働基準法一一四条所定の付加金、及び内金五三万二八四三円に対する同六〇年六月二六日から、内金七五万一九四五円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金の、同天川は、未払い時間外賃金の合計七〇万一六二四円、同額の労働基準法一一四条所定の付加金、及び内金三〇万〇三五二円に対する同六〇年六月二六日から、内金四〇万一二七二円に対する同六三年三月二七日から各支払い済みまで年五分の割合による遅延損害金の、支払いをそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2  同2及び3のうち、昭和五八年一月から同六二年八月まで(以下「本件期間」という)の原告らの基準内賃金及び年間所定労働時間が原告ら主張のとおりであること、原告らのタイムカードの退出欄または残業欄に打刻、記入された時刻から算出された時間外労働時間が原告ら主張のとおりになることは認める。但し、本件期間における原告らの時間外労働時間が右時間であることは否認する。したがって、原告らが支給を受けるべき賃金についての原告らの主張は争う。

3  同4は認める。

三  抗弁

1  昭和六三年改正前の労働基準法施行規則(以下「旧規則」という)二二条本文

原告らの業務は、同条所定の「労働時間を算定し難い場合」に該当する。即ち、原告らは被告の営業部社員であり、顧客先を訪問してオートカウンター、フォトマスター等の自動制御器の販売を行うことを業務としており、業務の性質上、外勤が常態になっているうえ、自宅から顧客先への直行・顧客先から自宅への直帰が多く、それも全て原告らの裁量に委ねられているため、被告において原告らの労働時間の把握、算出は不可能である。したがって、被告は同条により原告らは通常の労働時間労働したものとして扱えば足りる。

原告らは、タイムカード、営業日報、事前に行う訪問先についての打ち合わせ等により、原告らの労働時間を把握することは可能である旨主張する。しかしながら、直行・直帰の場合、タイムカードの出退時刻の記載の仕方について原告らの間でも一定していないこと、営業日報は顧客との交渉経緯の報告書及び原告らの覚書として利用しているものであるから、時刻欄の記載は大雑把で正確なものとはいえないこと、事前の訪問先についての打ち合わせは具体的な訪問先まで打ち合わせているわけではなく、その予定も変更される場合があること、同一の訪問先でも、その目的の相違等により訪問時間は異なること等から被告において、これらにより原告らの労働時間を正確に把握することは到底不可能である。

なお、被告は原告ら営業部員に対して、時間外労働の把握が困難である等の理由により、基本給の一〇パーセントプラス金三〇〇〇円の営業手当を支給している。

2  消滅時効、除斥期間

(1) 被告は、原告ら給与を毎月二〇日締めで前月の二一日から当月二〇日までの給与計算をし、当月二七日に支払っている。

(2) 原告らの本訴請求のうち、昭和五九年一一月から同六一年二月までの賃金及び付加金についての請求は、同六三年三月一八日になされた。

(3) 被告は、右賃金請求に対して、本件口頭弁論期日において消滅時効を援用する。

(4) 原告らの本訴請求のうち、右期間における付加金の請求について、原告らの請求時には、すでに二年間の除斥期間が経過していた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1のうち、原告らが被告の営業部社員であり、顧客先を訪問してオートカウンター、フォトマスター等の自動制御器の販売を行うことを業務としていること、外勤が常態になっていることは認め、顧客先への直行・直帰が多いこと、それが全て原告らの裁量に委ねられていることは否認し、その余は争う。

原告らはタイムカードを出社・退社時に打刻しており、直行・直帰の場合も顧客先に到着した時刻、訪問後の最寄りの駅又は自宅への到着時刻を記入し所属グループ長に報告、承認を得ている。のみならず被告は、営業社員の賃金計算をタイムカードを基礎資料にした作業月報によっており、また被告は従来から営業社員の早出・残業時間をタイムカードにより把握し、これにより「著しく時間外の多い者」に賞与を与えてきた。したがって、原告らの労働時間の算定は可能である。

さらに原告らが顧客先で業務に従事する場合、原告らは毎月月始めに作成し被告のチェックを受けた訪問計画表に基づきこれを行い、しかも日毎に営業日報を作成して、上司に提出しているから、被告は原告らの労働時間について時間管理をしているというべきである。そして被告は昭和五八年一二月から営業部長の指示により、営業日報への時間記入の徹底化を図り、一層時間管理を強化している。また、原告らは、営業手当の支給を受けていることをもって、労働時間の算定が不可能であると認めているわけではない。

したがって、原告らの業務は旧規則二二条所定の「労働時間を算定し難い場合」に該当しない。

2  抗弁2の(1)事実は明らかに争わない。

五  再抗弁

1  旧規則二二条但書(抗弁1に対して)

原告らの直行・直帰は予めグループ長の承認に基づき行われるものであるから、旧規則二二条但書所定の「予め別段の指示をした場合」に該当する。のみならず右直行・直帰は、被告の顧客訪問計画による密度の高い営業計画を実施するためには避けられない行為であって、むしろ被告から督励されていると考えられ、被告の包括的な別段の指示があるというべきである。

2  中断等(抗弁2に対して)

(1) 原告らの所属する労働組合は、昭和六一年一一月二八日、被告に対し原告らのタイムカードのコピーの交付、閲覧等を申入れたが、被告は拒否した。その後、原告らは同六二年三月一七日大阪地方裁判所に対し証拠保全の申し立てをなし、同裁判所は、同年九月二日同カードの検証を行い、原告らはその内容を確知した。原告らは、同カードを閲覧しない限り、本件請求金額の算出が不可能であるので、提訴できなかった。右経緯に鑑みれば、公平の見地から本件消滅時効の起算点は、原告らが請求金額を算出することが現実に可能になった、右検証がなされた同年九月二日と解すべきであるし、本件付加金請求の除斥期間の起算点も同日と解すべきである。

(2) 原告らは前記タイムカードの閲覧・コピー交付の申入の際、その申入書に「当事者と組合意ひきつづき残業手当の未払分を請求したく考えており」と明記していたから、右申入は裁判外の催告に当たると解すべきである。そして、前記のとおり原告らは、右催告日から六か月以内の同六二年三月一七日に証拠保全の申し立てを行ったのであるが、右申し立ては「裁判上の請求」ないし「仮差押、仮処分」に準ずるものとして、右催告日たる同六一年一一月二八日に時効は中断したと解すべきである。

六  再抗弁に対する認否

1  再抗弁1は争う。

原告らの直行・直帰は原告らの裁量によりなされているものである。また、旧規則二二条但書の「使用者の別段の指示」とは使用者において労働時間の算定が容易もしくは可能となるような個別的・具体的な「指示」と解すべきであるから、原告らの主張するような包括的なものは、右「指示」に該当しないことが明らかである。

2  同2は争う。

原告らの請求金額の確定は、タイムカードの確認なくしても可能であり、そうでないとしても、同カードの確認はもっと早期に可能であった。また、証拠保全の申し立ては訴訟物たる権利の行使とは関係ないから、「裁判上の請求」ないし「仮差押、仮処分」に準ずるものとはいえない。したがって、消滅時効の起算点を証拠保全の検証日とする原告らの主張は、失当である。

第三証拠(略)

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。なお、(証拠略)によれば、被告は営業部社員だけに対し従来から営業手当を支給していたが、同四八年五月一七日被告と原告らが所属する全大阪金属産業労組北陽電機分会は、「営業手当を定額(一律)三〇〇〇円プラス基本給の一〇パーセントとする。但し、一〇〇円未満は切捨、欠勤一二日以上は二分の一、全休は支給しない。右手当には販売職としての或る程度の時間外を含む。但し、特に時間外の多い者については賞与時に別途考慮し、その金額は別記する。昭和四八年四月二一日より実施する」との協定を締結したこと、それ以後被告は協定どおり営業部社員に対し右手当を支給してきたが、時間外手当は支給していないことが認められる。

二  同2、3の事実について検討する。

1  同2、3の事実のうち、原告平井、同尾曲、同吉田、同市川、同天川の本件期間における基準内賃金、年間所定労働時間が、それぞれ別表(1)ないし(6)の当該基準内賃金欄、年間所定労働時間欄記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。そして基準内賃金に一二を乗じて(一年は一二箇月であるから)年間所定労働時間で除して計算されたものが時給であるから、原告らの本件期間における時給は、別表(1)ないし(6)の当該時給欄記載のとおりであると認められる。

2  ところで原告らは、原告らのタイムカードの打刻・記載から原告らの労働時間が確定しうることを前提とし、本件期間における時間外労働時間が、それぞれ別表(1)ないし(6)の当該残業時間欄記載のとおりである旨主張するので、その当否について判断する。

(1)  (証拠略)、弁論の全趣旨によれば、原告ら被告従業員の勤務時間は午前九時から午後五時三〇分とされていること、原告らはタイムカード(出勤表)に、毎日の出勤時刻、退出時刻を記録していたこと、本件期間における原告らの右タイムカードの退出欄または残業欄に打刻、記入された時刻及び前記原告ら定時の勤務時間から算出された日毎の時間外労働時間を合計して、月毎に集計した数値は別表(1)ないし(6)の当該残業時間分欄記載のとおりであることが認められる。

そして右各本人尋問の結果によれば、原告吉田(但し同六〇年一二月二〇日退社した)、同市川、同天川は被告東京営業所勤務の、同平井(但し同五八年二月までは同営業所勤務であった)、同尾曲は同営業所横浜分室勤務の営業部社員であること、原告らの業務は顧客先を訪問してのオートカウンター、フォトマスター等の自動制御器の販売であり、外勤が常態になっていること、タイムカードの記録は、同営業所にはタイムルコーダーが設置されているので原告らのタイムカードはこれにより打刻されているが、自宅から直接訪問先へ行く直行及び訪問先から直接自宅へ戻る直帰の場合は原告らの手書きによってなされていること、横浜分室にはタイムレコーダーがないため、同分室勤務の原告らの同カードはすべて原告らの手書きの記載によって行われていることが認められる。

(2)  (証拠略)によれば、原告らの同五八年一月から同五九年一〇月までの期間における実労日数は計一八六三日であるのに対し、直行・直帰の合計日数は四五二日であること、したがって原告らは平均約四・六日に一日の割合で直行・直帰をしていたことが認められる。さらに、前掲各本人尋問の結果によれば、原告平井は出社時及び退社時に自分の腕時計または前記横浜分室の時計を見て、自らタイムカードにその時刻を記載していたこと、同天川は出社時及び退社時に自らタイムカードをタイムレコーダーで打刻していたこと、同平井は直行した場合、タイムカードの出勤時刻は訪問先入門時刻を記載しており、同天川は同五九年三月までは右平井と同様の記載をしていたが、同年四月から常に午前九時と記載していたこと、同平井は直帰の場合、訪問先の退出時刻、訪問先から自宅へ向かう最寄りの駅に到着した時刻または自宅へ到着した時刻を同カードに記載していたこと、同天川は直帰の場合、訪問先から被告に東京駅到着予想時刻を架電し、その時刻を記載していたこと、原告らは、直行・直帰の場合に上司からチェックを受けていたが、これまで一度も誤り・不備等を指摘されたことはないこと、以上の事実が認められる。

(3)  一般に、会社においては従業員の出社・退社時刻と就労開始・終了時刻は峻別され、タイムカードの記載は出社・退社時刻を明らかにするにすぎないため、会社はタイムカードを従業員の遅刻・欠勤等をチェックする趣旨で設置していると考えられる。

前記認定のとおり、原告らは出社・退社時にタイムカードに時刻を打刻・記載しており、上司のチェックも形式的なものにすぎないのであって、右事実に(人証略)を総合すれば、被告におけるタイムカードも従業員の遅刻・欠勤を知る趣旨で設置されているものであり、従業員の労働時間を算定するために設置されたものではないと認められる。したがって、同カードに打刻・記載された時刻をもって直ちに原告らの就労の始期・終期と認めることはできない。さらに前記認定事実によれば、原告らの業務は外勤が主であり、いわゆる直行・直帰を約四・六日に一日の割合で行っており、旧規則二二条所定の「労働時間を算定し難い場合」に該当するか否かはさておき、そもそも労働時間を算定しにくい業務であると認められるうえ、原告らの直行・直帰の場合のタイムカードの記載方法は統一されていなかったことが認められるから、特に直行・直帰の場合、同カードに打刻・記載された時刻をもって原告らの就労の始期・終期と認めることは、およそできないというべきである。以上によれば、原告らの労働時間はタイムカードに打刻・記載された時刻によって確定できないと判断される。

(4)  もっとも、(人証拠)によれば、被告は、原告ら営業部社員のうち半年間の時間外労働の合計が一〇〇時間を超えている者に対し賞与時に特別付加金を支給していること、この場合の時間外労働時間の算定は、同五九年三月までは原告らのタイムカードに、それ以降は同カードにより事後にチェックされた所長作成の営業日報を基礎として作成された営業月報によっていることが認められる。しかしながら、被告が原告ら営業部社員に対してだけ時間外手当を支給せず、営業手当を支給しているのは前記認定のとおりであり、さらに右証言によれば、被告は原告らの給料の計算にあたっては同カード及び右月報を使用していないこと、被告は、右特別付加金は残業を奨励するために政策的に支給しているものであり、原告らの労働時間の正確な算定は、本来、不可能であるとの認識のもとに他に適切な資料がないから、やむなくタイムカード等を特別付加金の算定に使用しているにすぎないことが認められる。そうすると、被告が右特別付加金の算定に当たってタイムカード等を使用していることは、前説示を覆すに足りない。

3  さらに、本件全記録を精査しても他に原告らの労働時間を確定するに足りる証拠はない。

三  よって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蒲原範明 裁判官 鹿島久義 裁判官北澤章功は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 蒲原範明)

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